京セラの簡単ケータイに学ぶ「聞こえ」の科学



 京セラ製の「簡単ケータイ K012」は、60代を中心とするシニアをメインターゲットとするフィーチャーフォンだ。防水・防塵対応に加え、キーが光って操作を案内するガイド機能、音や文字を大きくする「でか機能」、音声読み上げ機能などを従来機種から継続して搭載しつつ、音と振動で音声を伝える「スマートソニックレシーバー」や「はっきり通話」「なめらか通話」「聞こえアシスト」といった、聞きやすさのための新技術を新搭載した。
 同じスマートソニックレシーバーを搭載する「URBANO PROGRESSO」開発陣インタビューに続き、「簡単ケータイ K012」の開発陣にも、聞きやすさに関する機能を中心に開発の狙いを聞いた。
●聞きやすさに注力 あえて“アナログ”的な機能も搭載
ITmedia 「簡単ケータイ K012」の開発コンセプトを教えてください。
横山氏 簡単ケータイ K012は、弊社が手がけた9モデル目の簡単ケータイです。シリーズの統一コンセプトである、通話のしやすさ、分かりやすさ、見やすさといったポイントをさらに進化させました。特に聞きやすさについては重点的にとりくんでいます。
 簡単ケータイをお選びになる方の中には、“聞こえ”の衰えが出始める年代も多いため、そこをしっかりフォローしようということになりました。中でも代表的なものが、URBANO PROGRESSOにも搭載されたスマートソニックレシーバーの採用。従来モデルとの外観上の違いは受話口がないことです。京セラがセラミックの技術をベースに独自開発した圧電素子がディスプレイパネルを振動させて、音と振動で聞こえるようにしています。雑踏のような少しうるさい場所でも、しっかり耳を塞ぐように当てていただくことで、音が聞こえやすくなるメリットがあります。そのほかの聞きやすさの機能としては、新たに「なめらか通話」と「聞こえアシスト」を搭載しています。
ITmedia なめらか通話は、どういう機能なのでしょうか。
横山氏 通話マイクから入った自分の声や周囲の音などを、レシーバー(通話用スピーカー)から聞こえるようにする機能です。これによって、より自然に会話をすることができます。
水田氏 耳をふさいでしゃべると自分の声が普段と違って聞こえますよね。電話をするときは受話器で耳をふさぐため、どうしても聞き慣れない自分の声が聞こえてしまいます。しかし黒電話などの固定電話は、“側音”といって自分のしゃべった声がレシーバーからも聞こえるようになっています。聞き慣れた自分の声が自然に耳に入るため、通話に違和感を覚えません。携帯電話ではこの“側音”が一般的にないことが多く、通話時に自分の話している声に違和感を覚える方もいます。
ITmedia 自分の声や周囲の音が聞こえないと、人間は自然な会話ができないということですね。
横山氏 携帯電話で話すときに声が大きくなる方がいますが、あれは自分の声が聞こえにくいからです。普段話すのと同じように相手に話している自分の声が聞こえると、話しやすく感じます。自分の声が聞こえないとどうしてもしゃべりにくく、これは誰もが無意識に感じていることです。
ITmedia 今までの携帯電話にはそういった機能は搭載されていなかったのでしょうか。
水田氏 他社の端末をすべて調べたわけではありませんが、京セラとしては初めてです。というのも、固定電話の“側音”はアナログ回線の仕様でどうしても発生してしまうもので、通信技術としての視点から見ると“側音”は無いほうが理想だからです。携帯電話がデジタル方式になって“側音”は無くなりましたが、固定電話の聞こえ方に慣れていたり、先ほど述べたように自分の声を自然に聞くという意味では“側音”が無いと逆に不自然に感じる場合がある。特に年配の方は固定電話をよく使われていますから、その聞こえ方に近づけることも、聞きやすさ、話しやすさは向上すると考えております。
ITmedia デジタル化したけどアナログ的な雰囲気に戻そうということですね。
水田氏 簡単ケータイでなければやろうと思わなかったと思います。「なめらか通話」の機能に関してリサーチすると「話しやすい」とおっしゃる方が多かった。今更ながらメリットに気がついて、搭載に至ったという経緯です。
横山氏 特に60代〜70代くらいの方に使っていただいたところ、話しやすくなるという方が多くいらっしゃいました。ただ1人1人の慣れや好みの面もありますから、オン/オフができるようにしました。「なめらか通話」がお好きでない方はオフにしていただけます。携帯電話での通話に慣れている人には必要ないかもしれません。
水田氏 無意識に感じる部分ですので、聴き比べてみないと違いは分からないと思います。なめらか通話をオンにしたから、聞こえ方が極端に変わるわけではありません。
●普段の会話をサポートする「聞こえアシスト」
ITmedia もう1つの聞こえアシストとはどんな機能ですか。
横山氏 こちらは通話中ではなくて、それ以外のときに使っていただく機能です。周りの人との会話やテレビを見ているときなどに使うことを想定していますが、本体のマイクから音を拾って、レシーバーから音を大きくして出します。イヤフォンを使って、本体を閉じて聞いていただいても結構です。周りの音が少し増幅されて聞こえやすくなります。
ITmedia アプリケーションとして用意されているんですね。
横山氏 メニューから聞こえアシストをオンにして耳に当てていただくと、例えば今、私が話している声がちょっと大きめに聞こえます。会話のときにも使えますし、家族と一緒にテレビを見ていて、自分だけのために音量を大きくするわけにはいかないときにも利用できます。
ITmedia こういうアイデアグッズもありますよね。連続でどれくらい使えるのでしょうか。
水田氏 丸1日使い続けることは想定していないのですが、約12時間程度です。
ITmedia こうしたニーズは以前から把握していたんでしょうか。
水田氏 補聴器を付けるまでいかない、だけど少し耳の衰えを感じ始めた方に対して、ニーズはあると認識しています。
横山氏 持っているケータイにこのような機能があれば便利に使って頂けると思っています。また、聞こえの機能としてはもう1つ、従来から搭載している「はっきり通話」がバージョンアップしました。これまではオン/オフの2段階しか設定できなかったのですが、今回はオフも含めて効果が6段階になり、きめ細かく設定できるようになりました。耳の衰えも一律ではないので、その人に合った聞きやすさに設定することができます。
●細かい改善やカスタマイズで着実に進化
ITmedia K012では、本体のサイドに音量調節キーを搭載しましたね。
横山 そうですね。今までは音量もテンキー上部の十字キーで調整するようにしていましたが、サイドにあることによって、話している最中にもっと自然に使えるようになりました。また、音声読み上げ機能がありますが、その読み上げキーの横に音量調節キーがあることで、音声読み上げを聞きながら操作しやすくなっています。
ITmedia 電源キーのスライドスイッチはこのモデルが初めてですか。
横山氏 いいえ、2009年夏モデルの「簡単ケータイ K003」からスライド式です。「キーの長押しは難しい」というフィードバックに応える一環として、電源もスイッチ式にしています。画面のバックライトが消えてしまうと、電源が入っているかどうかも分からなくなりますが、これなら一目でスイッチのオン/オフが分かります。逆に、終話キーの長押しでの電源のオン/オフはできませんが、押しすぎて電源まで切れてしまう、という心配はありません。
ITmedia 新たに搭載された「音声コード読取」とは、どういった機能ですか。
横山氏 音声コードとはJAVIS(日本視覚障がい情報普及支援協会)が開発した2次元コードで、それをカメラ機能で使って読み取り、発声する機能です。「簡単ケータイ K012」専用のアダプタがJAVISから販売されますので、それとセットで使っていただくことになります。音声コード自体は約800文字記録できる2次元コードで、「ねんきん定期便」などの公的な書類に載っています。それをカメラで読み取っていただくと、書いてある内容を音声読み上げします。
ITmedia 端末とは別にアダプタが必要なんですね。それがなくても、読み取ろうと思えばできるものでしょうか。
横山氏 読み取り位置にきちんと合わせる必要があるので、あったほうが確実です。
ITmedia 今回の待受アニメーションは「日本の伝統色」ですね。
横山氏 本体を開け閉めする度に、待受画面で表示される色が変わります。日本古来の色の名前は数多くあって、「原色大事典」から引用した130色を用意しました。開けるたびに名前と色が背景に表示されます。1年を通じてランダムに出現するものと、季節に応じて出現するものがあります。また、背景の柄が4パターンあって色とランダムな組み合わせで表示しますので、トータルで520パターンの画面になります。
ITmedia 今回の簡単ケータイのカラーバリエーションはどのように決められたのですか。
横山氏 前モデルの「簡単ケータイ K010」は3色でしたが、その前の「簡単ケータイ K008」までは4色展開が多く、今回もゴールド、ホワイト、ピンク、ネイビーの4色展開です。男性女性問わずゴールドは人気がありますね。精密機器、高級なものというイメージを持たれるようです。売れ筋のゴールドとホワイトに、男性向けにネイビー、女性向けにピンクを用意しています。
 ピンクは花柄のパターンですが、他のカラーも実はパターンが入っています。細かいパターンを入れることによって上質感を表現したのが今回のデザインのポイントになっています。
ITmedia 染め物の柄のような和風な感じですね。
横山氏 実は日本の伝統色のグラフィックと連携していまして、背面のパターンと同じものが日本の伝統色の背景にも使われています。?
ITmedia シニア向け端末の機能はどんどん充実していますね。
横山氏 シニア向けだから――というわけではないのですが、さまざまなお客様へのニーズに対する配慮などから、機能が徐々に増えてきていますね。
●“簡単スマートフォン”の登場は?
ITmedia さて、NTTドコモが「らくらくスマートフォン」を発表しました。簡単ケータイをスマートフォンに、というアイデアは、当然考えていらっしゃると思うのですが。
横山氏 そうですね。簡単ケータイをシリーズでやってきて、その都度ユーザーアンケート調査をしたり、インタビューをしたりしていますが、前モデルの「簡単ケータイ K010」のアンケートで『次にどういうタイプの端末を使いたいか』という質問をしたところ、『スマートフォンを使ってみたい』というユーザーの方が2割弱いらっしゃいました。これだけスマートフォンが普及してくると、年配の方でもスマートフォンを使ってみたいと思われる方はいます。市場の流れをみながら検討していきたいと思っています。
ITmedia どうもありがとうございました。
[房野麻子,ITmedia]
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by pachifu | 2012-06-25 19:30