堤幸彦、元気の源はロック!今も「大人の言うこと聞かねえぞ」

 今年は、4本の監督作品が上映される。7日からは、人気ドラマの劇場版「劇場版SPEC〜天〜」が東宝系で公開。不可解な事件を扱う警視庁公安部の捜査官2人(戸田恵梨香、加瀬亮)と、超能力者たちの戦いを描いた刑事ものだ。
 「この作品は、“地球の生き物の基本的なあり方”がテーマです。一見、特殊能力者が暴れまくるような内容なのですが、一番伝えたいことは、『人類は進化する』ということです」
 そこには、進化しても変わらない大切なことは何か? というメッセージも込められている。ところが、そんな真面目なテーマとは相反するようなギャグが満載なのも、この作品の特徴だ。
 「今回は、40−50代の方のために、懐メロ的なエッセンスもたっぷり入れました。伊丹幸雄とかローラ・ボーとか、作品とはまったく無関係な単語もたくさん出てきます」
 真面目さとおふざけのアンバランスさは、これまでの作品にも通じる監督の魅力だ。その原点は、「寺内貫太郎一家」だという。
 「樹木希林さん(当時:悠木千帆)が沢田研二さんのポスターを見て『ジュ〜リ〜』と叫ぶシーンが原点です。当時、『作りもののストーリーなのに、なんでジュリーだけが本物なのさ?』と疑問を持ったのと同時に、『ドラマって自由に作っていいんだ』と思ったんです」
 自由な発想を信条に作り上げた独特な世界観は、“堤色”と呼ばれている。その世界を彩るのが、強烈な個性のキャラクターたちだ。実は、そこにも監督の哲学が隠されている。
 「オールマイティー・ピープルも、普通の人もいない。みんなどこか変だったり、怖かったり、かわいかったりする。きちんとそこを抽出して、作品に投影したいですね」
 5月には路上生活者の生き方を表現した映画が公開される。今後は、社会に対して思うことを作品にも反映させたいようだ。
 「今までは、とにかく人を楽しませるものを作りたいと思ってやってきました。でも最近、興味を持つ題材は、路傍のホームレスの生活や歴史的事象だったりするんです。今後は次の社会に向けて、硬派な作品も作っていきたいです」
 そこでも伝えたいのは、普遍的に変わらない大切なことだ。
 「どんな職業であっても、基本は『人間が好き』というところから始まることが大切だと思うんです。それがあると、選択も変わるでしょうしね」
 いまや引っ張りだこの人気映画監督だが、スタートはテレビ番組のディレクターだった。その一方で、CDデビューをしたり、演劇ユニットを立ち上げて舞台の演出をしたりと活動幅は広い。現在は愛知工業大学の客員教授もしている。
 「大学では、教えるというよりも一緒に楽しんでいます。映像とは関係ないコースの学生さんなのですが、僕らが覚えるのに10年かかった編集技術を1週間くらいで覚えてしまう。発想も面白いので、非常に刺激的です。明らかに人間は進化していることを目の当たりにしていますね」
 同時に学生でもある。「実は今、大学3年生なんです。通信で勉強していて。これが面白いんですよ。勉強したいと思うと、どんな難しいことでも平気です。知らないことがあれば、その場へ行って、見て、触れて、味わうようにしています。チャンスがあるかぎり、勉強するべきだと思いますね」
 今の大学を卒業したら、「次は美大に行きたい」。そして、いつかは展覧会のディレクターをやってみたいそうだ。56歳とは思えないほどアクティブで、好奇心旺盛。その元気の源は「ロック」だと言う。
 「バンドをやるってことだけでなく、精神もロックでいたいんです。若いころから今までずっと『大人の言うことは聞かねえぞ!』という気持ちがあります。もう十分に年齢的には大人なんですけどね」 (ペン・加藤弓子 カメラ・寺河内美奈)
 ■つつみ・ゆきひこ 1955年11月3日生まれ、56歳。愛知県出身。映画監督、演出家。テレビディレクターから出発し、多数のCMやプロモーションビデオの演出を手掛ける。88年、オムニバス作品「バカヤロー! 私、怒ってます」で劇場映画デビュー。テレビでも「金田一少年の事件簿」「ケイゾク」「池袋ウエストゲートパーク」「TRICK(トリック)」など数々のヒット作を生み出した。2006年、「明日の記憶」が日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞。08〜09年には「20世紀少年」3部作公開。5月には「MY HOUSE」、7月には「エイトレンジャー」が公開。
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by pachifu | 2012-04-05 00:31